『【帯グルイ】中身を読むのは野暮。帯の文言だけで脳内トリップした傑作本5選』

【帯グルイ】中身を読むのは野暮。帯の文言だけで脳内トリップした傑作本5選
    目次

    本の帯で脳内トリップする

    本屋の棚の前で、カバーの下半分に巻きつけられた「帯」をじっと見つめている人間がいたら、それは私かもしれない。

    まず、タイトルにについて説明させてほしい。「帯グルイ(おびぐるい)」とは何か。

    それは、本の内容そのものよりも、表紙に巻かれたわずか数センチの「帯」に過剰に魅せられ、その言葉の圧やフォント、色に心を奪われてレジへ走ってしまう奇病のことである。

    そして、帯グルイにとって「中身を読むのは野暮」なのだ。誤解しないでほしいが、本を軽視しているわけではない。むしろ逆だ。

    本を開いてしまえば、そこには著者が用意した「正解(ストーリー)」が待っている。しかし、ページを開く前の帯には、たった一行のフレーズから無限に枝分かれする「まだ見ぬ大傑作の可能性」が詰まっているのだ。

    「全米が息を呑んだ」

    「まず良識をみじん切りにします」

    「これを読まずして、何を語るのか」

    そんな強烈な言葉を投げつけられて、どうして素直に1ページ目を開けようか。

    「なぜ『良識』を刻むのか? 主人公はサイコパスの料理人か?」

    「『何を語るのか』と脅すキャッチコピーは、どんな修羅場をくぐってきたのか?」

    帯のわずかな情報から、主人公の性格や物語の結末、果ては出版社の会議室の空気まで勝手に脳内ででっち上げ、妄想の旅に出る。この「正解に邪魔されない時間」こそが、読書における最高に贅沢な時間なのだ。

    今回は、私の脳内を完全にトリップさせてくれた傑作帯を5つ厳選した。

    帯グルイの掟

    • 第一印象で妄想する

    本に関する口コミなどの他者主観が入る前、本文を読む前にその帯と出会った第一印象を妄想で広げる。とにかくその本の内容が全く分からない状態が大切

    • 帯の一行で、勝手に妄想する

    帯と表紙の色のコントラストやフォント、キャッチコピー自体からくるインスピレーションで楽しんでしまう

    • 予想が外れても気にしない

    本の妄想と本当の内容に差があっても本の評価につなげてはならない。気軽に、読む前の妄想と本の内容で2回楽しむ気持ちで妄想する

    帯の文言だけで脳内トリップした傑作本5選

    01. 『閲覧厳禁』 著者:知念 実希人

    「知念実希人 閲覧厳禁 帯の画像」

    惹かれた帯の言葉:「読んでは、いけない。」

    第一印象:購入を後悔する系広告キャッチコピー第1位、でも手に取ってしまう魅力第1位

    脳内トリップ「この本を読んでいた自分が狂気殺人者になる(なっていた)」

    まずは、だれもが映画の全米第1位くらい信じることができないこのキャッチコピーに足を止めてしまうはずだ。絶対に読んでも”問題ない”と思ってしまうこの本を見た時、誇大広告のような印象を受ける一方で、読み終わった後に本当に読んではいけなかったと思うパターンが存在するのではないかと疑心暗鬼になる。そのパターンとはなにか。私は脳内トリップし、読み終わった後に読者であった自分がいつの間にか主人公の狂気さにハマり、デスノートでキラの信者がキラになるように狂気殺人者になっている物語は面白そうだと考えた。

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    02.『52ヘルツのクジラたち』 著者:町田 そのこ

    「町田 そのこ 52ヘルツのクジラたち 帯の画像」

    惹かれた帯の言葉:「なんで痛々しく力強い物語。」

    第一印象:キャッチコピーよりも2方向の権威性(読書メーター・凪良ゆう氏)からの絶賛

    脳内トリップ「タイトルにはくじら、帯では人と交わる…擬人化した孤独な物語」

    この本のタイトルは、「52ヘルツのクジラたち」といい、表紙は明るい海ではなく、深く暗い海の中にいるくじらが表現されている。また、52ヘルツについて知識がなく調べてみると、原因や要因は不明だが周波数の異なる音を発するクジラがいるらしい。そして、帯のキャッチコピー「なんで痛々しく力強い物語。」も合わせて考えると、他者と異なる特徴を持ち、毎日傷つけられながら生きている主人公が想像できた。その主人公が他者(蔑む人、憐れむ人、何も気にしない人)との関わりで力強く成長していく物語と妄想してみた。

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      03.『方舟』 著者:夕木 春央

      「夕木 春央 方舟 帯の画像」

      惹かれた帯の言葉:「9人のうち、死んでもいいのは、救われるのは誰か?」

      第一印象:黒の背景職にオレンジのフォント色でホラー並みの不気味さを感じる

      脳内トリップ「「死んでいいのは?」「救われるのは?」違うベクトルに向かう言葉が実は同じベクトルに…」

      「9人のうち、死んでもいいのは、救われるのは誰か?」というキャッチコピーについて、単純に考えれば9人の登場人物それぞれに感情移入し、死んでもいい人と救われる人を脳内で分けて本を読み進めるようにおすすめしてくれているように感じる。しかし、私は死ぬと救われるを相反するものではなくイコールで結ぶ妄想をしてみた。死ぬことで現世の苦しみから解き放たれて救われるという解釈である。8人を苦しみから解き放つ主人公こそが方舟の役割を担うのだ。

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      04.『生殖記』 著者:朝井 リョウ

      「朝井リョウ 生殖記 帯の画像」

      惹かれた帯の言葉:「おったまげフェスティバルの始まりだ~」

      第一印象:なぜか男性ならすぐに想像できる解放感を感じる。とても明るいイメージ

      脳内トリップ「魂が抜け、ほかの人の体に映りながら生殖し、最強のドラクエモンスターズを目指す」

      帯のキャッチコピー「おったまげフェスティバルの始まりだ~」のおったまげとは魂が抜けるくらい驚いた時を表現している。そこから主人公は魂が抜けて他の人の体に入れる能力を持っているのではないだろうかと想像した。人の体に入り生殖(子孫を残す)を繰り返す(フェスティバル)。それではただのエロ本だ。そこで気になるのが生殖”記”という本のタイトルと、帯や表紙の色から感じる明るいイメージだ。子孫を残すと同時にドラクエモンスターズみたいになろう系くらい最強になっていくのではないだろうか。

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      05.『傲慢と善良』 著者:辻村 深月

      「辻村深月 傲慢と善良 帯の画像」

      惹かれた帯の言葉:「圧倒的な恋愛小説」

      第一印象:婚約者が消えたことが”圧倒的”な恋愛にどうつながるのか?圧倒的とはなにか。

      脳内トリップ「過去にある傲慢な人間の要素を愛し、圧倒的恋愛となる」

      帯のキャッチコピーが「圧倒的な恋愛小説」であるため、あま~い恋愛を考えていたが、「婚約者が忽然と姿を消した…居場所を探す」から、なにやら不穏な恋愛しか感じない。本のタイトルの傲慢と善良についても妄想する。傲慢の反対は謙虚だとすると、傲慢と善良は対比で並べられていないことがわかる。婚約にたどり着くまで善良を装っていたが、本当は傲慢な人間であった…その傲慢な過去の事実を受け入れられることで圧倒的に恋愛になるのではないか。

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      終わりに

      帯の文字面だけで勝手な妄想を繰り広げてきたが、いかがだっただろうか。

      本文をまだ1ページもめくっていないというのに、本とは別に私の脳内にはすでに5つの物語が生み出され、すっかり心地よい疲労感に包まれている。

      帯が放つ強烈ななにかに吸い寄せられ、言葉の余白に思いを馳せるこの時間こそ、もっとも本にわくわくしている時間なのではないだろうか。

      もしあなたも本屋の片隅で、「この帯の煽りはいくらなんでも過剰すぎる」「編集者の正気を疑う」という強烈なフレーズに出くわしたら、ぜひそっと教えてほしい。

      それでは、第2回【帯グルイ】の妄想トリップでまたお会いしましょう。

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